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~課題解決型FPの家計改善相談①~ 「貯金が出来ないのですが・・・」という相談事例

相談業務を行うFPとして看板を出す前、実は一番多い相談ではないか、という想定をしていたのだが、(意外に思われるかもしれないが)この相談は実はそれほど多くはない。  FPによるネット記事などで家計破綻の事例紹介など多くあるが、現場感覚からすると、耳目を集めやすい極端な話が多く、正直少し盛りすぎではないか、という感想を持ってしまう。(破綻→債務整理・自己破産なので、そもそも相談先はFPではなく弁護士であろう。)  では何故このテーマの相談が相対的に少ないかは下記のことが想定される。 ① 事務所の方針として、結婚している方は必ず夫婦で相談にくるように伝えている。1回目の相談は無料なので、まずは危機感を持っている方(多くは女性)が来るが、2回目の有料相談に危機感を持たない配偶者(多くは男性)を説得して連れてくることが出来ない。夫婦の力関係にもよるが、このハードルが意外に高い。 ② 率直に「恥ずかしい」という感覚がある。 病気と違い、「貯金が出来ない」という症状は「浪費ぐせ」「管理出来てない」という自分たちの意思の弱さだという思い込みがあるから、それを赤の他人に赤裸々に話すにはやはり躊躇があるのだろう。 ③ FPに相談すると現在の支出を改善すべく、様々な制約が生まれ我慢が伴い、しんどい生活を強いられるというイメージがある。

 一方で、相対的に事例が少ないとはいえ、「どうしたらお金が貯まるか?」という問いは、主な相談内容ではなくても顧客から聞かれることも多く、雑談でも良く出るテーマなので、多くの方にとって興味のある内容なのであろう。また、上記の理由により一歩が踏み出せない方の参考になればとも思っている。  本題に戻そう。ではなぜ貯められないのか? 個々人の性格や行動様式・趣味趣向などに起因する原因は様々であるが、根本的でかつFPとして「改善可能」な原因と、そこから導かれる改善方法は下記の2つになる。

A)貯蓄(資産形成)の重要性の認識の欠如  人類はこれまで「貯める」という行為で多くのリスクマネジメントを行ってきたはずである。穀物の計画的生産や燻製、発酵食品などその好例ではないか。季節によって命を繋ぐ食材の収穫高が違うからこそ、獲れないときのために貯める方法を編み出し、命を繋いできた。大きく収入が減少した時に、貯めた分を使うことで、生活を安定させるという、とても重要な機能があるのが貯蓄であろう。そのことはぼんやりとは分かっていても、豊かな文明社会の中では危機は見えにくく、かつ「いつ」「どれくらい」マイナスが発生するのかについても把握しにくければ、貯蓄の重要性も認識しづらくなるのではないだろうか。  では、どうすればいいか。  FPとして出来ることは「リアル」で「想定可能」な未来を突き付けることであると考えている。これはFP資格を持った金融や不動産の営業パーソンでは難しく、顧客の機嫌を気にしなくていい職業FPだからこそ出来る行為ではないだろうか。  そしてその具体的なアイテムは「ライフプランニング」になる。ライフプランニングは別な稿でも述べているのが、経験を積んだFPが現状を詳細にヒアリングすることで、未来の家計と資産はかなりの精度で想定可能となる。  老後に2000万は必要だ。という一般論ではなく、あなたの家庭は「何歳の時にキャッシュアウト」して人生トータルで〇〇〇万円不足する可能性が高く、子供の学費は全額奨学金か学資ローンで、かつその返済で老後は今の生活費の半額でないと生活出来ない可能性が高い。さらに今述べたことは夫婦が健康で働き続けることが出来た場合で、健康上や市場経済の変動リスクには全く備えることが出来ないので、起きた時のダメージはさらに〇〇〇万円に上る。という具合に、忖度せずに提示することはとても重要であると考えている。おそらく多くの方が、学業や仕事でも現実や事実を突きつけられ、目標との乖離を把握し、ではどのようにすれば改善し成果を出すことが出来るかを日々行っているはずである。仕事や学業のよう頑張りすぎる必要はないが、せめて1年に1度ぐらいは現実と想定される未来を直視することをお勧めしたい。

B)貯蓄するための仕組みがない  「貯蓄をしたい」という思いや「節約」への意識は多くの方が持っているにも関わらず、貯まらないのはやはりその仕組み作りが出来ていないからであろう。  では、「まずは家計簿をつけるところから」という指導をするかというと、FPとして推奨したことはない。仕事や育児で多忙の中で継続性が求められる家計簿を作るのは、かなりハードルが高い。  また、意識や努力はご本人にしかコントロール出来ないので、FPとしては貯まる仕組みを作ってしまうことが現実的で効果的という結論になる。具体的にはA)においてライフプランニングをすることで、「今」から「いつのいくらの為に」「毎月いくら貯めるべきか」ということが明確になっているので、その分を入ってきた収入から、使う前に先に抜いてしまい、残った分で生活する、という仕組みを作ることが有効になる。  その「抜く」先で推奨しているのは生活口座がある銀行で作る「積立定期預金」になる。社内預金や財形貯蓄、確定拠出年金、証券会社(積立NISA)や保険会社(終身保険・変額保険)の積立も状況によっては有効ではあるが、現在預貯金がないのであれば、最もリスクが低く、手軽に始められる積立定期預金をお勧めする。  先々必要な資金を計画的にストックし、生活口座に残る資金だけで生活する、というコミットが出来れば、あとはその生活口座が枯渇しないような生活をする=ないものは使えないので、支出は自然とコントロール出来るようになる。  最後に。先ほどの積立定期預金以外の方法にも触れたが、生活費の半年分程度の現預金があるならば他の選択肢も考慮することも、もちろん有効である。(今後別稿でも述べるが、一定以上の現預金はリスクにはなりえる。)  ただし、大事なのは選ぶうえで、そこに「根拠」があるかどうかである。「なんとなく」「営業パーソンに勧められたから」「お得そうだから」ではなく、あなたの今の収入、職業、資産額とその内訳、家族構成から導かれるライフプランに「あっているか」「あっていないか」がとても重要である。保険などの積立プランのセカンドオピニオンの相談も多く受けているが、この「根拠」が全くないことに愕然とすることが多い。(しかも勧めたのはFPというオチもある。)まさに「手段」であるべき金融商品の「目的」があいまいだと、そんなことも起こりえるのではないだろうか。  貯蓄も「目的」にしてしまうと無味乾燥でつまらないものであるが、ワクワクするような素晴らしき人生を歩むことを「目的」として描き、その「手段」として貯蓄をとらえることができれば、それこそ継続可能で有意義な貯蓄(手段)となるはずである。

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