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課題解決型FPの家計改善相談② 「貯金はどれくらいあればいいですか?」という相談事例

このテーマで記述する前に、巷で「資産」という言葉でその企業や個人の評価をすることにとても違和感がある。例えば不動産で資産価値5千万円でもローンが同額あれば純粋な資産である「純資産」はゼロでしかない。貯金も500万あっても、奨学金やカードローンやリボ払いが同額以上あれば、純資産はマイナスということになる。一方で貯金がほとんどなくても、不動産や金融商品の評価額が高い場合もある。  なので、この質問について、顧客が言う貯金とは何を指しているのか、明確にすべきであろう。つまり、 ① 目標額としての「純資産」 ② 足元での「銀行預金」

まず目標額としての「純資産」について述べてみたい。老後2000万円問題が昨年話題となったが、現場のFPからすれば、そもそも2000万という数字が「貯金」なのか「金融資産」なのか「純資産」なのか、という定義も曖昧なだけでなく、生活スタイルや価値観、夫婦の年齢差(これは想像以上に大きな必要資金差になる)、も無視して、分かりやすい数字だけを出す手法には憤りさえ覚える。  さらに言えば、純資産は中身がとても重要になる。現預金だけ持っていても取り崩した分だけ減っていくが、株や債券・不動産であれば、価値の変動があったとしても収益を生む可能性もある。資本主義という経済システムは「資本」を投下して「収益」を得ることで経済を回しているので、「資本」を有効に投下しているのか、精神的な安定を求めて現預金だけ抱えておくか、どちらが有利かは自明であろう。もちろん持ち方やその中身に関してはまた別の稿で述べていきたいが、ポートフォリオも決めて目標を立てることが出来ればより実現の可能性は高くなるのではないだろうか。もちろん、現在の生活水準や価値観も様々であるので、あえて数値例は出さないが、90歳までの理想の老後を描き、FPにライフプランニング表の作成を依頼して、必要額と目標額を明確にすることを推奨したい。

 先々の純資産の目標額と中身のイメージが出来ると、足元での預金の非効率さも理解出来てくるのではないだろうか。  現預金の価値とは何か。それは通貨としての価値の物差しであり、価値と価値を交換する時に介在させる道具であるという点であろう。つまり現預金とはあくまで「道具」であり、使わなければ、そのもの自体が何かを生み出すことはない。  では、使うという観点で見た場合、常時どの程度のストックが必要か。(純資産が300万以上かつ3000万未満という一般的な家庭であれば)特に何か大きな買い物や出費の予定がないのであれば、年収の半年分あれば十分であり、逆に手取り年収を超えた資産を現預金だけで持つことはお勧めできない。  もちろん、自営業の方であれば基準は変わってくるが、日本は会社員や公務員であれば、急に解雇されたり収入が半減する、ということは制度的にも文化的にも考えにくい。むしろ、持ちすぎることはインフレ(物価上昇)時にはリスクしかない。また、そのある程度守られた収入が、老後大きく目減りすることを想定して余剰資金をそのために活用するか、せめて分散保有という資産保全の鉄則から現預金比率を下げる努力が必要になる。

 あなたがもし仮に経営者だとしたらどうだろうか。 65歳になると自動的に本業の売上が激減することが明確なのに、今本業で得た利益をずっと現預金という何も生まない、かつインフレリスクのある資産に置いておくだろうか? おそらく、65歳以降の売上対策として本業以外の収入源を考えるか、せめて今積み上げている内部留保を守ることを考えるはずだ。  家計とは生活であり人生感そのものが表れるので、合理的すぎる必要はないが、是非経営的な観点を少しで取り入れて頂ければと思う。

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