top of page
flim.png

いつ起こるかわからない体の異変に向けて家族信託を知ろう

 医療の進歩、出生率の低下などにより高齢化社会がますます進んでいる現在。いつ自分が病気になったり、認知症になったりしてしまう場合にご自身の財産管理をどのように行うべきか不安に思っている方が多くいます。

 今は、元気だけど、いつ何があるかわからない先のためにご自身でもう準備はお済でしょうか。突然のことで、残された家族やご自身の事業の継続、繁栄のためにいまからでも始められることを準備していってください。


認知症対策としての財産管理については成年後継人制度が、自分の死後の財産分配について遺言の制度がすでにありますが、今回は家族信託についての仕組みやメリットとデメリット、実際に利用する際に必要になる手続きや費用について解説します。



家族信託とは

民事信託ともいわれ、家族の財産や生活を守るための制度です。

家族信託の契約をすることで、家族に財産の管理や処分をできる権限を与えることができるため、認知症など自分自身で財産を管理できなくなった時の備えとして役立ちます。財産管理のための報酬が発生しない家族間での利用が想定されており、基本的な仕組みに反しなければ当事者が信託契約の内容を自由に設計できます。


家族信託では、委託者、受託者、受益者の三者が当事者となります。

  • 委託者:財産を委託する人

  • 受託者:財産の管理や運用、処分を担当する人

  • 受益者:信託財産の財産権利を持つ人

家族信託の活用はどのように行われているのか利用ケースをみていきましょう。



認知症対策

家族信託を利用すれば自分が認知症等の状態になる前から財産管理を任せる状況をスタートさせることができます。さらに、財産の管理処分については信託契約であらかじめ定めておくことができるため、柔軟な資産運用にも対応することが可能となります



不動産の管理

賃貸不動産の名義人となっている所有者が高齢化してくると、次第に自分で不動産の管理を行うことが難しくなってきます。ただ、不動産の所有権を子供に移転して、その管理を任せたいと思っても、不動産を贈与するには多額の贈与税が発生するため、実際に行うことは難しいです。そこで、不動産の管理に家族信託を利用するのです。

家族信託を利用すれば、不動産の管理は子供に任せることができ、一方で不動産の贈与は発生しないため、多額の税金を負担する必要はありません。



障害のある子供の財産管理

障害を持つ子供がいると、その子供が将来的に安定した収入を得ることができるのか、非常に不安に思うことがあります。親が亡くなった後に、残された子供がどのように生活していくのかを考えた時に、家族信託を利用することができます。

障害を持つ子どもがいる親が所有する不動産について、信頼できる親族を受託者、自身が委託者兼受益者となり、信託契約を行います。

そして、自身が亡くなった時には、障害を持つ子供が新たな委託者兼受益者となるように、信託契約を設計しておきます。こうすれば、子供が収益を得ながら、不動産の管理を信頼できる人に任せることができるのです。



事業承継

生前贈与や遺言では、「2代目の経営者が3代目の経営者を誰にするか?」について、基本的に創業社長は口を出すことはできません。しかし、家族信託の場合は3代目以降の経営者についても創業社長の生前に定めておくことが可能です。信託契約の設定から30年経過後の代替わりについては、1代限りしか定めておくことができません(30年以内であれば何代先でも指定しておくことが可能です)。


このような家族信託の利用ケースがあります。当然メリットだけでなくデメリットもあります。まずはメリットからお話します。



家族信託のメリット
  • 本人の体調や判断能力に影響されることなく財産の管理ができる

  • 成年後継制度よりも柔軟な財産管理が可能

  • 遺言の代用に加えて残された家族のための信託も可能

  • 資産承継の順位を決めることができる

  • 倒産隔離機能がある



家族信託のデメリット

  • 受託者を誰にするかでもめてしまう可能性がある

  • 名義が受託者になることへの抵抗感

  • 成年後見人制度の『身上監護』機能がない *身上監護:病院への入院や入所手続きなどのこと

  • 遺言が不要になるわけではない

  • 節税効果は少ない

  • 遺留分侵害請求の対象になるかどうかは意見が分かれる


家族信託のメリット、デメリットを理解して活用していきましょう。

その家族信託を始めるためにはどのようなことは必要か解説いたします。



家族信託の目的を決める

家族信託の手続きを始めるにあたっては、まず、家族信託の目的を定めなければなりません。

家族信託は、どのような目的であっても、基本的に自由に利用することができるため、委託者が何のために利用するのかを最初に決めておくのです。例えば、高齢となった委託者が不動産や金融資産の管理を子供に任せたい、あるいは軽度の認知症となった委託者が財産の運用を子供に任せたい、というようなことです。家族信託を利用すれば、自身の財産を積極的に活用する権限を受託者に付与し、その財産を活用して収益を得られるようにすることができます。家族信託の目的を明確にしておくことで、委託者と受託者の考えに相違のないようにすることができ、契約書の作成もスムーズに進めることができるのです。



信託契約書を作成

信託契約は、委託者と受託者との間で締結される契約です。

契約は口頭でも有効に成立するため、必ず契約書を作成しなければならないわけではありません。しかし、家族信託の内容は複雑で様々な形があり、また長期間にわたる契約になることも想定されるため、契約書を作成しておく必要があります。またこの時、契約書を公正証書により作成するのが一般的と言えます。信託契約書を公正証書とするのは、次の手続きである信託用口座の作成にあたって、銀行に公正証書の信託契約書の提出が求められることがあるためです。また、契約書を公正証書とすることで、公証人により契約書を作成してもらうことができ、より証拠能力が高くトラブルになりにくいものとすることができるのです。専門家に家族信託を依頼する場合、契約書の作成や信託契約に関する法的な問題点がないよう、専門家に依頼することができるため、より安心して契約を進めることができます。



信託登記や信託用口座を作成する

家族信託を行うため、対象となる信託財産に関する手続きが必要となります。信託財産に不動産が含まれている場合は、その不動産の登記名義を委託者から受託者に移転しなければなりません。家族信託を行う場合、委託者から受託者に不動産の所有権が移転する形となり、同時に信託登記を行います。こうすることで、受託者が不動産の管理を行うことができるようになるのです。また、家族信託の受託者は、信託財を自身の財産とは分離して管理しなければなりません。そこで、信託口口座を金融機関で開設する必要があります。この時、信託契約書が必要となるため準備しておきましょう。中には、公正証書による信託契約書が必要とされる金融機関もあるため、事前に確認しておく必要があります。


このように家族信託を行う上での流れを把握して、実際に行っていくこととなった時には当事者である家族が自力で行うことも決して不可能ではありません。しかし、法律的な知識が不十分な人が手続きをおこなうと不備が発生する可能性があります。安心、安全に家族信託を利用するには法律に関する専門家に相談をしていってください。

0件のコメント
新着記事 New article
人気記事 Popular articles
bottom of page